エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」
https://gyazo.com/c87a81ddba64b6b1684eb0a8bbf5cc28
なぜこの本を読んだか
何が書かれている本か
Effectuation とはそもそも何かとの5つの経験則についてが書かれている
メモ
そもそもの背景にある世界観
エフェクチュエーションの大きな特徴は、従来の経営学が重視してきた「予測」ではなく、「コントロール」によって不確実性に対処する思考様式であることです。
...
具体的には、5つの特徴的なヒューリスティクス (経験則) であり、それらは総体として「エフェクチュエーション」と名付けられました。
逆にこれまでの「予測」をコーゼーション (因果論) と呼んでいて以下のように特徴づけている
コーゼーションは、予測に基づいて機会を特定したうえで、成功する見込みの高いプロジェクトに効率的に経営資源を配分することが可能な、合理的なアプローチです。
ただし本文中でも以下のように述べていて、しかも組織や問題の成熟度合いによってコーゼーションに徐々に寄っていくとも書かれている
エフェクチュエーションを強調することは、コーゼーションの重要性を否定するものではありません。
...
対処すべき問題によって、両者を使い分けることが重要です。
本書を通じて提案したいのは、これまで私たちの世界に対する合理的な対処の仕方は、コーゼーションに偏っていたのではないか、ということです。
エフェクチュエーションを提唱したサラスバシーも、「その企業が生き残り、成長するにつれて、特にその企業が創出した新たな市場をさらに活用し、長期での競争優位を構築するためには、その企業のマネジメントはよりコーゼーションに基づくものになっていく必要がある」と述べ、企業のライフサイクルに伴い、どちらの論理を用いるが変化することを想定しています。
-> 個人的には、企業レベルというよりもプロダクトやプロジェクトレベルなのかなと思った。たとえばプロダクト。ポートフォリオ・マネジメント (PPM) の言葉を借りると金のなる木では当然コーゼーションで問題解決されていたいが、問題児や花形に対してはエフェクチュエーションが適用されるべきなどなど
余談でこの不確実性の定義もよかった
不確実性は一般に「職務を完遂するために必要とされる情報量と、すでに組織によって獲得されている情報量とのギャップ」と定義されている
概要とそれぞれの原則
https://gyazo.com/9a5b3caa5da319a6aaf78072da775efd
以下で紹介する原則を組み合わせつつ、一連の校どうの結果として構築されるパートナーシップを有効活用して巻き込みながら拡大していき、またこのサイクルを回していくというのが全体像
手中の鳥の原則 (bird-in-hand)
"A bird in the hand is worth two in the bush." に由来する
以下の3つの手段を活用することが実験からわかった
私は誰か
私は何を知っているか
私は誰を知っているか
これらをまず起点としてアプローチを考えていくというもの
いわゆる目的主導 (As-Is To-Be のような予測や計画) ではなく、手段主導でのアプローチ
許容可能な損失の原則 (afford to lose)
複数の行動の選択肢がある場合にも、最も期待利益の大きいもの、つまり最も成功しそうなものや儲かりそうなものを選ぶべきだと考えられます。ただし、環境の不確実性が極めて高い状況では、どれほど精緻に期待利益を予測しようとしたところで、それが得られる保証はどこにもありません。
だからこそ、こうした高い不確実性に繰り返し対処してきた熟達した起業家は、事前に予測された期待利益ではなく、逆にマイナス面、うまくいかなかった際に生じる損失可能性に基づいて、行動へのコミットメントを行う傾向がありました。
つまり ROI ではなくリスクベースで物事を考えていく
またこれらの副次的な効果として以下の3つがあるとも述べている
うまくいかない可能性が事前に考慮され、なおかつそれを自分が受容できることがわかっているため、新しいことを始める心理的ハードルが低くなる
最悪の自体が起こった場合に失うものに対して、事前にコミットメントを行うため、成功するかどうかの予測に無駄な労力を費やす必要もなくなる
うまくいかなかった場合でも失敗が致命傷とならないために、再度別の方法でチャレンジすることが可能になる
レモネードの原則 (lemonade)
"When life gives you lemons, make lemonade." に由来する
3種類の壺 (フランク・ナイトという経済学者による分類)
「中身の見えない壺の中に手を入れて、赤いボールを引き当てたら勝ち」というゲームを想定する
第一の壺 : 壺の中に赤いボールが50個、緑のボールが50個あるとわかっている
50% の期待値がある
第二の壺 : 壺の中に赤と緑が入っていることはわかっているがそれぞれの個数はわからない
事前に何回か引けばある程度の予測を立てることができる
第三の壺 : ボールの種類も個数もわからない状態 (赤と緑以外もあり得る)
何も予測が立てれない
現代において第一の壺のような状況はビジネスとしては中々ないので現実世界は第二の壺か第三の壺のような状況であることが多く、第二の壺は試行を繰り返したり同類の経験を多く集めたりすることで統計的確率を予測できるものは「リスク」にすぎないとして、第三の壺についてを「真の不確実性」(ナイトの不確実性、 Knighttian Uncertainty)と分類している。
第三の壺のような状況では「偶然」に頼るというのも大事でそのためには以下が大事であるとしている
予期せぬ事態に気づく
それが幸運な偶然なのか、そうでないのかは、その時点ではわかりません。一見してネガティブな事態も、それを活用する行動を伴うことで初めて、大きな成功につながる「幸運な偶然」に変換されるのです。
結果によって決定されるけど、アンテナを張っておく必要はあるんだろうなと思った
同じ現実に対する見方を変える (リフレーミング)
同じ偶然の出来事に対してその捉え方を意図的に変えることで、積極的に可能性や機会を見出そうとするのです。
予期せぬ事態をきっかけに「手持ちの手段(資源)」を拡張する
(再掲) 手持ちの手段 = 「私は誰か」、「何を知ってるか」、「誰を知ってるか」
拡張した手持ちの手段(資源)を活用して新たに「何ができるか」を発想する
クレイジーキルトの原則 (crazy quilt)
パートナーの参加によって、彼らの手持ちの手段(資源) がプロジェクトに加わるため、手持ちの手段が拡張され、「私は誰か/何を知ってるか/誰を知ってるか」は、「私たちは誰か/何を知ってるか/誰を知ってるか」へと変化します。それに基づいて、「何ができるか」もまた拡張的に定義されることになります。
このように自発的で意欲的な参加者を巻き込むことができれば (パートナーシップを構築できれば) やれることが増えてこの エフェクチュエーション のサイクルもまた拡張されることになる。
飛行機のパイロットの原則 (pilot-in-the-plane)
「コントロール可能な活動に集中し、予測ではなくコントロールによって望ましい成果に帰結させる」という思考様式
若干のこの原則だけ異質なのは、以下にもある通りこれが根幹となるような思考の話をしているからかもしれない
「飛行機のパイロットの原則」は、他のエフェクチュエーションの4つの原則を組み合わせることで実行されます。
この思考様式が有効な問題空間は以下であると述べられている
未来の結果に関する確率計算が不可能である「ナイトの不確実性」
-> レモネードの原則の壺の話を参照
目的の曖昧性
-> 目指すべき地点が変わったり、最終地点を定めることが難しい状態
環境の等方性
-> 有効な情報がわからない、変数がわからない状態
感想
全体的には特にアジャイルや新規事業をいくつかやったり、レガシーな領域でのエンハンスなどをしていた経験からもどれもわかるというものが多かった
どちらかというとこういう考え方や名前づけされるというところに価値があるなと思ったりした
また今後は意図してこういった行動を起こせるのも嬉しい
あとはコメントにも書いた通り以下のような気づきがあって意外なところに結びつくなという発見があった